ヒプロメロース(HPMC)使用の放出制御マトリックス錠
2023年2月10日
ヒプロメロース(HPMC、METHOCEL™)は、医薬品の賦形剤/結合剤として、錠剤コーティングのポリマー成分、あるいは放出制御製剤の主要な賦形剤として使用されます。ヒプロメロースは、60年以上にわたり医薬品の錠剤に汎用され、放出制御マトリックス錠にも実績があります。
ヒプロメロースは、徐放性製剤のうち、特にマトリックス錠に使用されています。HPMC製品の選択肢について、特に、患者さんに分かりやすく、サステイナブルな成分をお探しの場合は適切かご質問をお持ちかもしれません。ここでは、ヒプロメロースの主な特性についてご紹介します。
ヒプロメロースとは?
ヒプロメロースは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の一般的な呼称です。HPMCは賦形剤として、経口マトリックス錠からの有効成分(API)の放出速度制御を目的として使用されるポリマーです。
HPMCポリマーは、天然原料で最も豊富に存在するポリマーであるセルロース由来の半合成物質です。HPMCの一般的な特性をいくつかご紹介します。
- 冷水に可溶性
- 熱湯に不溶性
- 非イオン性
- 選択的な有機溶媒への溶解性
- 可逆的な熱ゲル化
- ほぼpH非依存性の水和と粘度
- 界面活性
- 無毒性
- ほぼ無味・無臭
- 酵素活性に抵抗性
- pH (2-13の範囲) で安定
- 増粘剤、乳化剤、結合剤、放出制御剤、フィルム形成剤
親水性マトリックスとは?
親水性マトリックス錠は、錠剤からの薬物放出速度を長時間にわたって制御する製剤です。
親水性マトリックス製剤の特性は以下の通りです。
- 比較的簡便な剤形
- 標準的な打錠機で調製可能
- 薬物ダンピング(バースト放出)しにくい
- 錠剤の硬度や打錠圧によって影響されにくい
- 賦形剤やポリマーのグレード選択で放出プロファイルの調整が可能
ヒプロメロース使用の親水性マトリックスは、多くの国で承認され、使用法も簡便で、優れた安全性の実績があります。そして、継続的に広い範囲で調査されています。これにより、HPMCは、医薬品用徐放錠を開発・製造する際の優先的な候補となっています。
徐放錠の薬物放出制御に影響する要因
徐放錠の開発に考慮すべき2つの主な要素は、処方設計と製造プロセスです。最終製剤の処方および放出プロファイルを決定する際には、さらに詳しいサブ要因も考慮する必要があります。
処方設計
初期段階の開発に考慮すべき主なサブ要因を、下記に挙げます。
- ポリマー(置換基、粘度、濃度、粒子径)
- 薬物 (粒子径、溶解性)
- 賦形剤 (溶解性、添加量)
- 他の賦形剤 (安定化剤、緩衝剤)
製造プロセス
これらのカテゴリーは、製剤の製造法によって異なります。
- 製造方法
- 錠剤の大きさと形状
- 打錠圧
- pH環境
- フィルムコーティング
マトリックス錠はそのように機能するか?
親水性マトリックスは、ゲル層を介した薬物の拡散 (可溶性有効成分の場合)、もしくは侵食(不溶性有効成分の場合) によって薬物の放出速度制御を可能にします。マトリックス中のポリマーの粘度は、放出プロファイルに大きく影響します。HPMCは、マトリックス徐放錠によって有効成分の放出プロファイルを制御し、より効果的な投与法を可能にします。また、錠剤の服用回数を減らすことがよって、患者さんの服薬コンプライアンスを向上させることもできます。結局、1日1回服用で済む錠剤は、1日に複数回服用が必要な錠剤よりも利点は大きいといえます。
放出制御製剤技術
HPMC(METHOCEL™)のような知名度の高い放出制御ポリマーのほかに、代替技術もご提供しています。放出プロファイルのより高度な調整や、新規製剤の開発としての可能性もあるかもしれません。
カラコンの徐放性技術では、複数のポリマーを組み合わせて使用します。そして、様々な放出速度を調整するために薬物粒子をコーティングします。その先端技術によって、シンプルな開発・製造プロセスを実現しながら、錠剤及びカプセル剤の安定した薬物放出性を達成します。
カラコンの徐放性フィルムコーティング製品、シュアリースやオパドライECでは、製剤開発の初期検討から生産までの技術サポートもご提供しています。
さらに詳しい製品情報をご要望の際はご相談ください。