徐放錠の処方設計: 課題とベストプラクティス
2023年3月9日
一般的な医薬品では、単に有効成分のみを錠剤やカプセルに充填するだけでは不十分です。効果的な治療には、適切な投与量と投与方法を守ることが重要です。その例として、マグネシウム欠乏症の患者さんでは、マグネシウムは大量の単回投与では十分吸収されず、継続的な一定量の投与の方がより顕著に大きな効果が得られます。
そこに、徐放性製剤のニーズがあります。薬物を体内に放出するだけでなく、特定部分を標的としてデリバリーすることも可能になります。経口投与製剤の時間に依存する放出では、薬物放出速度を実現する処方設計はチャレンジングです。ここでは、そのうちいくつかの課題について、解決するためのベストプラクティスについてご説明します。
徐放性製剤とは?
徐放性製剤では、患者さんが錠剤やカプセル剤を服用後に、薬物放出速度が長時間にわたってコントロールされています。これらの一般的な製剤では、親水性または疎水性マトリックス、リザーバー、多粒子、浸透圧ポンプ型放出システムなどがあります。
徐放性製剤の利点
徐放性製剤は、主に3つの理由から多くの薬物に有用です。
- 患者さんの服薬コンプライアンスを改善します。これは、患者さんが1日に服用する複数の錠剤を覚える必要がなくなるためです。
- 「pill burden」と呼ばれる、毎日多数の錠剤を服用することによるネガティブな心理的影響も軽減します。
- また、初回投与後の薬の服用回数を減らすことで、副作用はもとより発作のリスクも減少させる可能性もあるといわれています。
徐放性、放出制御、持続放出性の比較
放出制御製剤(Controlled Release: CR)と持続放出性製剤(Sustained Release: SR)は、いずれもModified Releaseとも呼ばれる、徐放性製剤(Extended Release)に大きく分類されます。放出制御製剤とは、一定期間にわたって一定の薬物放出速度を維持することですが、持続性放出製剤では、薬物を予め設計した速度で放出します。それは、適正な期間に適正な薬物濃度を維持して、副作用を最小限に抑えるためです。
持続性放出製剤は経口剤が一般的ですが、放出制御製剤はそれ以外の投与方法でも可能です。
遅延放出(Delayed Release: DR)は、放出制御の一種ですが、経口投与で刺激性の高い有効成分から胃粘膜を保護するためや、逆に、胃液中で有効成分が分解されるのを防ぐために広く使用されています。例えば、小腸の局所治療用の製剤では、小腸に到達するまで有効成分を放出させない必要があります。これらは、錠剤または多粒子経口固形製剤として処方設計され、プロトンポンプ阻害剤(PPI)やアスピリンなどで腸溶性コーティングされた製剤が広く使用されています。
徐放錠処方設計の課題
徐放化での最も大きな課題は、原薬(API)の放出速度の調節です。錠剤を服用後、有効成分は適正な間隔で適正な量を放出されなければなりません。
ターゲットとする薬物放出プロファイルを達成するために、効果的な錠剤処方やフィルムコーティング処方は重要です。製剤が設計通りに作用し、患者さんの服薬コンプライアンスを確実にするためにも、適切な処方を選択する必要があります。これによって、患者さんの治療効果が向上し、製剤への信頼も高まるでしょう。
効果的なドラッグデリバリーの主な課題は、薬物放出が一定で、(該当する場合は)体内の標的とする部位に放出されることです。常に一貫した結果をもたらすためには、経験豊富な生産チームによる信頼性と再現性のある製造技術とともに、安定性の高い処方が重要です。
徐放錠処方設計のベストプラクティス
設計に沿った徐放性製剤の開発を、可能な限り達成するために、いくつかのベストプラクティスをご紹介します。
- 原薬の粒子の表面積を小さくするように検討すること。これにより、薬物放出をよりコントロールしやすくなります。
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マトリックスシステムを用いる。マトリックスシステムでは、医薬品の溶出を調節するために、原薬を放出制御に機能する賦形剤と混合して打錠します。これには、親水性または疎水性のポリマーを使います。
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最新のフィルムコーティング技術を活用する。コーティング剤として異なるポリマーを用いることで、有効成分の溶出速度を制御したり、その放出を遅延させて特定の部位に送達させることができます。
- 実績のあるサプライヤーを選択する。処方設計や製造に実績のあるサプライヤーが、最新の設備を使ったラボでの検討に基づいて、製品開発を効果的にサポートします。カラコンの技術チームは、フィルムコーティングやマトリックスシステムの課題に数十年にわたって取り組んできました。ぜひカラコンにご相談ください。