服薬コンプライアンスを向上する錠剤デザインの3つのアドバイス
2018年5月10日
目標に基づいて慎重に設計されたデザインの錠剤は、患者さんに好ましい印象を与えることのできる重要な要素です。しかし、このブランド化のチャンスは製薬業界でいつも利用されているわけではありません。
米国食品医薬品局(FDA)が毎年承認する新規経口固形製剤(処方箋薬)は、業界データ (PharmaCircle) によれば、減少の傾向ではありますが、その約25%は依然として白色の素錠です。
これらの新薬を既存の製品と比較すると、錠剤デザインに一層注意を向ける必要性がすぐに明らかに分かります。今回は、安全性にフォーカスした錠剤デザインについてご紹介します。それは、製造や包装工程中の製品取り違えの防止に役立ち、さらには、患者さんの服薬へのコンプライアンスや意欲の向上に役立ちます。その結果として、製品の需要も伸びるかもしれません。
機能的なスマート錠剤デザインによる大きな利点
錠剤など経口固形製剤のスマートデザインが、製薬業界だけでなく患者さんにとっての利点も理解することは大切です。
米国食品医薬品局(FDA)は2017年に、販売に影響を与え、患者さんと製薬企業の信頼関係を損ない、且つ供給とサプライチェーンの両方に混乱を与えかねないとして、約2000品目の製剤及び生物製剤を市場から撤退させました。FDAはデザイン性に乏しいことを理由とし、承認申請を拒否することもあるのです。
またデザイン性に乏しい錠剤やカプセルが原因で、悲惨な犠牲者を生むこともあります。米国医薬研究所 (現在の全米医学アカデミー)で調査されたレポートによると、人的ミスが死因となったケースのうち、治療中の投薬ミスにより死に至った人の数は、アメリカ国内で毎年約7,000人にも及ぶそうです。
人命を犠牲にするという悲惨な実態に加え、世界保健機関(WHO)の報告によると、処方箋薬での勘違いや投薬ミスにより、年間約3,000億USドルに相当する金額が、本来避けることのできる医療廃棄物として処理されていると報告されました。
近年、FDAと欧州医薬品庁(EMA)の両機関により、錠剤やカプセルは患者さんの視点からデザインすることを推奨したガイダンスが発出されました。これは『Safety by Design』(デザインによる安全策)と呼ばれています。
服薬コンプライアンスとは?
「服薬コンプライアンス」という用語は、患者が医師の指示に従い、処方された薬を服用遵守することを意味します。良好な服薬コンプライアンスとは、患者が指示通りに薬を服用することで治療経過が良好となり、治療薬としてもより良い成果を期待できます。一方、服薬コンプライアンスが不良なために、しばしば不十分な治療結果につながります。
錠剤のデザインは、服薬コンプライアンスを向上させるSafety of Designのコンセプトを考慮することが大切です。
服薬コンプライアンス向上する3つのアドバイス:Safety by Design による錠剤デザイン
安全性にフォーカスした錠剤デザインは服薬コンプライアンスを向上させることができます。これを実践するための3つのアドバイスは以下の通りです。
アドバイス 1: 白色の素錠を避ける
高齢化が進むにつれ、ひとりの患者がいくつかの薬を同時に服用すること(多剤併用)は珍しいことではありません。アメリカでは現在、約15%の人は5つあるいはそれ以上の処方箋を服用しています。
そのためこれまで以上に、簡単に識別できる錠剤を製造することが重要視されます。外観の似ている錠剤、特に白色の素錠は、患者、薬剤師、介護士あるいは製造業者ですら容易に混同してしまうリスクがあります。
最近の事例では、ジェネリック医薬品のフェノバルビタール錠において、30㎎の錠剤が入ったボトルが、誤って15㎎の錠剤であるとラベル表示されてしまったために全国的に自主回収されました。
C.O. Truxton, Inc.により回収された白色のフェノバルビタール錠15㎎及び30mgの錠剤は、15㎎錠は片面に「West-ward 445」と刻印され、反対の面には何もデザインされていませんでした。30㎎錠は片面に「west-ward 450」と刻印され、反対の面にも刻印がありました。
錠剤の色や形状を異なるデザインにすることで、流通する前にラベルの貼付ミスを発見することができたかもしれません。
アドバイス 2: 異なる色で含量を識別する
複数の含量の製剤の製造では、規制当局は色による識別が医療関係者だけでなく、一般の人たちにもはっきりとわかるよう、確実に行われているかに目を向けています。
大手の製薬会社で最近、FDAへの最初の申請時に、錠剤の外観が似すぎているとの理由により不承認とされてしまったとして、カラコンに錠剤デザインをご依頼されました。
不承認となった錠剤
承認された錠剤
アドバイス 3: ブランド認知を向上させる色を選択する
医薬品では、色素を選択して添加する機会が広い範囲にわたります。しかしながら、最終的に使用する色素、原料及び規制要件は、最終製品が医薬品かサプリメントなのかによっても違いがあります。
カラコンのウェブサイトにご登録いただくと、オンラインColor Selectorで色の選択を行うことができ、色の選択肢を検討される際の出発点として最適なツールとなるでしょう。また、カラコンの担当者は、コーティング剤の機能上のニーズを満たし、製剤への適用範囲やターゲット市場を確認しながら適切なコーティングシステムの選択をサポートします。
製品の識別および規制要件を満たす最良(BEST)な方法はカラコンにご相談ください。